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【第23回図書館総合展 ポスターセッション出展団体賞】信州大学様

2022.09.12

■学校概要

国立大学法人 信州大学
昭和24年発足。8学部5研究科からなる総合大学です。
広域型キャンパスという特徴を持った総合大学で、長野県内に5つのキャンパスと附属学校園を擁しています。
教育目標は「かけがえのない自然を愛し、人類文化・思想の多様性を受容し、豊かなコミュニケーション能力を持つ教養人であり、自ら具体的な課題を見出しその解決に果敢に挑戦する精神と高度の専門知識・能力を備えた個性を育てます」。
学部を越えた共通教育や、自然豊かな信州の地域性を活かした実践教育、環境マインドの育成など特色のある教育を実施されています。
(信州大学公式ウェブサイト大学の概要キャンパス案内教育の特色より引用)

▼大学様側でも受賞について取り上げていただきました。
https://www.shinshu-u.ac.jp/institution/library/matsumoto/news/2022/07/23-3.html

信州大学様 図書館外観
図書館外観 写真提供:信州大学

■選定理由

 今回、初めて図書館総合展に出展された信州大学附属図書館 “ピアサポ@Lib”の皆さん。ポスターセッションにて「“ピアサポ@Lib”の活動紹介」や「コロナ禍での取り組み」を発表しておられました。
 これらの発表を拝見し、授業との連携や担当教員からの推薦・研修を受けた学生アドバイザーが存在する大学公式な形での学習支援体制であることや、コロナに負けず「レポートの書き方講座動画」など工夫して取り組みを行っているということを知ることができました。また、相談件数や満足度も高く、活発で充実した活動であることを感じました。
 これらのすばらしい活動に対し、この度弊社から「日本事務器賞」を贈呈させていただくこととなりました。

■日本事務器賞授賞式

 2022年7月15日(金)、長野県松本市にある信州大学中央図書館へお邪魔し、賞状と記念品の贈呈を行いました。
 本来、2月に贈呈をさせていただく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大などにより延期を重ね、ようやく贈呈させていただくことができました。
 当日は、東城館長や図書館職員の武田様、箸本様ら4名、”ピアサポ@Lib”メンバーの学生2名にご参加いただき、明るく和やかな雰囲気の中で表彰式を開催いたしました。

授賞式の様子
授賞式の様子 写真提供:信州大学

 授賞式後は、ポスターセッションで発表されていた”ピアサポ@Lib”の活動について、詳しくお話を聞かせていただきました。その内容をご紹介します。

■ピアサポ@Libとは

  ”ピアサポ@Lib”とは信州大学中央図書館で実施されている、主に初年次生に向けた学習支援サービスです。先輩の学生がアドバイザーになり、親身に相談に乗ってもらえます。
 ピアサポートとは、米国の精神福祉の分野で始まった、同じような立場や経験をした人がお互いに支え合うという取り組みです。従来の「支援する・される」という関係ではなく、「支える・支えられる」という関係性をつくることができるため、当事者同士で本音を出して体験を語り合う機会となり、より気軽に相談しやすくなるという効果があります。近年では、分野も広がり、ピアサポートを行う大学も増えてきました。
 信州大学では、2011年から学習相談全般を担う「ラーニングアドバイザー」制度を開始し、2013年には、レポート支援に特化した「ライティングアドバイザー」制度を追加しました。そして、2017年に、ラーニングアドバイザーとライティングアドバイザーを総称し、”ピアサポ@Lib”という名称が使われ始めたのだそうです。
 学習支援が開始された2011年頃は、図書館業界でラーニングコモンズが話題となっており、信州大学でも学習支援が盛り上がりを見せ始めた時期だそうです。図書館の機能として学習支援を強化していこうとなり、静かなイメージから動きのある図書館へ、物理環境だけでなく人・ソフトの面からのサービスも行っていこうということで、学習支援を開始されたそうです。
 アドバイザーを担当する学生に対して、図書館職員や担当教員による定期的な研修も実施しており、日々アドバイザーとしてのスキルアップも図っています。

ピアサポ@Libの相談ボード
ピアサポ@Libの相談ボード

■ラーニングアドバイザー

ラーニングアドバイザー 写真提供:信州大学

 ラーニングアドバイザーは、指導教員の推薦を受けた学部4年生・大学院生を中心に活動を行っています。「気軽に訪れてもらう」というコンセプトのもと、図書館2階に滞在しており、1日3時間の滞在で3、4件の相談に対応するそうです。1件の相談に1時間半かけることもあるそうで、相談に対して親身に向き合っている様子が感じられます。
 相談に来る1年生にとってはもちろんのこと、アドバイザーの学生さんも「学習した1年生当時とは見方が変わって理解が深まる」と話しており、アドバイザー自身の成長の機会ともなっているようでした。また、支援前に今までの相談記録を確認したり、自分自身もわかりやすい記録を書くように工夫したりと、しっかり準備をして臨まれていました。
 答えではなくその過程をどう伝えるかや、相談者が自分で自分の答えに気づけるような伝え方などコミュニケーションのとり方に苦労されているようでした。しかし、「分からないことを放置しないように支援する」と話しており、とても頼もしいアドバイザーだと感じました。

■ライティングアドバイザー

ライティングアドバイザー
ライティングアドバイザー 写真提供:信州大学

 ライティングアドバイザーは、ライティング支援と連携している授業の担当教員から推薦を受けた優秀な学部生2〜4年生で活動を行っています。じっくりとレポートに向き合うというコンセプトで活動しており、相談者である1年生により近い目線で接することができるという点が特徴です。
 連携している授業では、先生から「何回目の授業でこういった内容のレポートを出す。それについてライティングアドバイザーに相談に行かせます」と事前に課題の内容や出題時期等を共有してもらうそうです。それに応じた研修などを図書館職員から行い、十分に準備を重ね、手厚い体制で対応していました。
 「直接相談するのはハードルが高い」と感じる1年生に向けては、気軽にレポートについて学べる以下のようなコンテンツも公開されており、常に新しい取り組みに挑戦されている様子も伺えました。

・アドバイザーが作成したレポート作成の参考となる「レポートの書き方講座」動画
・レポート作成のコツなどをまとめたリーフレット「レポート作成虎の巻」  
 ※動画は専用ポータルサイトからのアクセスが必要

 アドバイザーの学生さんは「レポート等は明確な正解がないので、大学から配布されている『レポートの書き方(新入生ハンドブック)』を基準に何を伝えたいかを一緒に考えるようにしている」と話しており、レポートの目的を指導しつつ相談者の主張もきちんと伝えることを意識されているのだと感じました。

■コロナ禍での活動

動画「レポートの書き方講座」の一場面
動画「レポートの書き方講座」の一場面 写真提供:信州大学

 コロナ禍で様々な活動が制限される中、”ピアサポ@Lib”の皆さんはZOOMでの学習支援やオンラインイベントの開催などで活動を継続されていました。
 ZOOMでの学習支援を申し込むには、学内専用プラットフォームから予約を取る必要があります。オンラインでの学習支援は、相談者にとっては場所を選ばず相談できる、アドバイザーにとっては1対1の支援で教えやすいというメリットもあるそうです。
 しかし、コロナ前は、アドバイザーが図書館の学習スペース横にブースを構えていたことで、図書館に訪れた利用者が気軽に”ピアサポ@Lib”を利用できていました。
 それがオンラインになったことで、特に初めて利用する学生には、ハードルが少し上がってしまったようにも感じているとのこと。アドバイザーの学生さんも「誰が担当してくれるのか開始するまでわからないことへの不安や、予約しないと受けられないという点がハードルの高さに繋がっているのでは」と話しており、今後の課題であると仰っていました。

 ライティングアドバイザーが主催するオンラインイベントでは、学生がつまずきやすいレポートの基本的な部分を、クイズ形式で出題する「レポートの王様」というイベントを行っていました。元々実施していた別のイベントで、グループワークを通して、他のグループの意見が参考になったという経験から企画されたそうです。企画から運営まで全て学生アドバイザーが行い、約70名が参加。「クイズ形式にしたことで敷居が低くなり、参加しやすかったのでは」とアドバイザーの学生さんも話していました。受講生も多くの気づきを得ることができ、有意義な活動になったそうです。

インタビューの様子
インタビューの様子 写真提供:信州大学

■授賞式及びインタビューを終えて

 インタビューを通して、教員・図書館・学生の信頼関係と綿密な連携がこのような充実した活動に繋がっているということが分かりました。
 ”ピアサポ@Lib”と同様の学習支援サービスは、中央図書館以外の学部図書館でも実施しています。現在、中央図書館でピアサポ@Libを担当している武田様は、工学部図書館での学習支援サービスの立ち上げに関わりました。教員と図書館職員との距離が近く、相談しあえる関係を築けていたことが各館でのサービスの実現につながり、その後も継続して実施しています。図書館と教員の心理関係こそが、”ピアサポ@Lib”をはじめとした信州大学附属図書館での学習支援を生み出したのだと感じました。

 ”ピアサポ@Lib”の大きな特徴は、授業との連携や定期的な研修です。これらによって、多くの初年次生が、質の高いライティング・学習支援を受けられる環境が整っているのだと思います。また、学生の大学活動への参画や、キャリア教育などの面からも、高く評価されるべき活動ではないでしょうか。
 学生同士で学び合うことで、支援をする側も受ける側も共に成長でき、”ピアサポ@Lib”がそのような一緒に成長していく場をつくっているのだと感じました。

 今後はコロナ禍で経験したオンライン支援と対面での支援を併用し、両方の良さを活かした学習支援に取組んでいくそうです。また、「ラーニングアドバイザーとライティングアドバイザー間でも、もっと交流の機会を設けたい」とも話されており、今後ますますパワーアップしそうな活動も楽しみですね。

 信州大学附属図書館 “ピアサポ@Lib”の皆様、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

※ 本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

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