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【第22回図書館総合展_ONLINE ポスターセッションGP出展者賞】東京・学校図書館スタンプラリー実行委員会様

2021.10.11

「図書館を見ると学校がわかる!?」東京・学校図書館スタンプラリー

■東京・学校図書館スタンプラリー実行委員会

「図書館を見ると学校がわかる!?
どんな本がある? 君の好きな本があるかな?
ホッとできる雰囲気? もっと勉強したくなる?」
多くの人に学校図書館への理解を深めてもらうことを目的とした「東京・学校図書館スタンプラリー」の運営を担う委員会。東京都にある国公私立の中学・高校・中等教育学校の学校司書・司書教諭で構成されている。

東京・学校図書館スタンプラリーホームページ:https://tokyohslib.ehoh.net/
図書館総合展ポスターセッション:https://2020.libraryfair.jp/poster/2020/p102

■まえがき

 2020年11月1日~30日に開催された「第22回図書館総合展_ONLINE」ポスターセッションについて、出展者賞「日本事務器賞」を東京・学校図書館スタンプラリー実行委員会様へ授賞させていただきました。
 併せて、同実行委員会の委員長であり、東京都立南多摩中等教育学校の司書を務められている杉山様へお話を伺いました。その時の様子をご紹介いたします。

東京都立南多摩中等教育学校 杉山様
杉山様(写真右)

■「東京・学校図書館スタンプラリー」とは?

「東京・学校図書館スタンプラリー」とは、毎年夏休みの期間を使って、東京都にある国公私立の中学・高校・中等教育学校の図書館を公開するイベントです。それぞれの学校ごとに決まった公開期間があり、その日程であれば、参加者は自由に各学校の図書館を見学することができます。
 『多くの人に学校図書館の魅力を知ってもらいたい、理解を深めてもらいたい』という想いから始まった取り組みのため、小学生、中学生、高校生とその保護者や教員といった学校関係者だけでなく、学校図書館に関心のある人であれば誰でもイベントに参加可能とのこと。
 残念ながら、2020年度は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け中止となってしまいましたが、その前の2019年度にはなんと35校、1,283名が参加している大規模なイベントです。各学校の司書たちが協力しあい、このスタンプラリーを運営しているというお話でした。

2019年第8回スタンプラリーのチラシ兼スタンプ台紙
2019年第8回スタンプラリーのチラシ兼スタンプ台紙

■スタンプラリーの歴史

 第1回は2012年、都立と私立で構成される13校により「東京・高校学校図書館スタンプラリー」という名前で始まりました。想定を超える139名もの参加者があり、学校図書館への関心の高さが感じられたこと、また引き続き開催してほしいという参加者の声があったことから、翌年も継続して開催することになったのだそうです。
 回を重ねるごとに順調に参加校が増えていったそうで、今回実際にお話を聞かせていただいた委員長の杉山様も第2回(2013年)から参加し、途中で初代委員長とバトンタッチ。規模拡大に力を入れ、第7回(2018年)からは念願であった国立学校もメンバーに加わりました。
 通常、学校のイベントは都立学校同士、私立学校同士などで開催されることが大半です。しかし、この「東京・学校図書館スタンプラリー」はそうした設置者の垣根を超え、多くの学校にフラットにアクセスできる貴重な機会となっています。将来どのような学校を選ぶべきか悩んでいる子どもや保護者にとって、この特徴が非常に画期的で魅力的なものになっているのではないでしょうか。

■スタンプラリーの内容 

 スタンプラリーという名前の通り、期間中に学校図書館を見学すると、その場で専用の台紙にスタンプを押してもらえます。スタンプは学校ごとに異なったデザインとなっており、特に小中学生にとっては、色とりどりのスタンプを集めるのが楽しいという声が多いようです。
 集めたスタンプの数に応じて、実行委員会が用意したプレゼントをゲットできます。景品は回によって異なりますが、参加校の学校司書たちがおすすめする本をまとめた、特製のブックガイド小冊子や手作りの栞、ブックカバーなどが用意されているそう。12校以上を訪問すると同実行委員会編著の書籍『学校図書館の司書が選ぶ小中高生におすすめの本300』(ぺりかん社 2017年刊)といった豪華なご褒美がもらえるのですが、こちらも年に何人かはゲットしていくとのお話でした。
 参加者を迎え入れる学校図書館側は、それぞれが決めた公開期間中に開館しておくことと、前述のブックガイドに掲載する本を選定して、紹介文を書くことが求められています。それ以外は公開日数も、参加者に課す条件もおのおの自由だそうですが、公開期間に合わせて図書館内イベント(スタンプ作りやPOP講座、ヒンメリ作りなど)を行う学校もあります。そういったイベントは特に人気が高く、一度に30〜40人の参加者が来ることもあるそうです。

ブックガイド小冊子
ブックガイド小冊子
配布しおり
配布しおり
ヒンメリ
ヒンメリ

 さらに第4回(2016年)からは、「未来の読者や創作者を育てる」ことを目的に、作家を招いた中高生対象の講演会を開催しています。
 講演会を通して、本や文学、読書を身近に感じてもらい、また、日常ではなかなか接することのない「作家」の話を聞くことで、生徒たちが進路や職業についての考えを深めることができればという願いから始まったそうです。初回は額賀澪氏、以降、阿部智里、柚木麻子、小嶋陽太郎、佐藤青南の各氏をゲストに迎えて開催され、毎年人気の催しとなっています。

 また、景品の豪華ご褒美にもなっている『学校図書館の司書が選ぶ小中高生におすすめの本300』(2017年7月刊、ぺりかん社)、『もっとある!学校図書館の司書が選ぶ小中高生におすすめの本 220』(2020年8月刊、ぺりかん社)も、実はこのスタンプラリーの活動から生まれた本です。
 参加者への景品として作成・配布している数年分のブックリスト小冊子をまとめ、さらに本を厳選して編集したもので、選者の紹介文と一緒に日本十進分類法のジャンル別に掲載されている優れもの。「本がたくさんありすぎて、何を読んだらいいのか分からない…」と悩む子どもたちのために、「面白い」「感動する」「ためになる」本を探すための手助けとして出版され、収益は全てスタンプラリー活動のため(ポスターや小冊子の印刷費用など)に使われています。
 この本は、なんと「東京・学校図書館スタンプラリー」に参加した出版社の方からお声がかかり、出版することになったのだとか。子どもの読書を深く理解しているプロが書いたブックリスト、という事で1作目が好評を博し、2020年には続編も出版されました。門戸を広げ、教育関係者だけでなく出版や公共図書館関係といった方も多く参加できるイベントだったからこそ、誕生した書籍なのですね。

『学校図書館の司書が選ぶ小中高生におすすめの本300』、『もっとある!学校図書館の司書が選ぶ小中高生におすすめの本 220』表紙
『学校図書館の司書が選ぶ小中高生におすすめの本300』、『もっとある!学校図書館の司書が選ぶ小中高生におすすめの本 220』 表紙

■運営の苦労とメリット

 これだけ大きなイベントになってくると、運営のご負担も気になるところ。不特定多数の人間が校内に入るということで、学校側からの懸念はなかったのかと伺ってみました。
 「当然、セキュリティ面ではかなり慎重に議論されることが多いですね。ただ、学校によっては事前予約制にするなどの対策も取れますし、幸いにして、今までに大きなトラブルが起きたこともありません。また、学校側としても、オープンキャンパスのように生徒募集の一環にもなります。これまでの実績を踏まえて、参加してくださる学校が多いです」とのこと。

 逆に、司書にとっても大きなメリットがある、と杉山様ご自身が感じていらっしゃるのだそうです。
 「自治体にもよりますが、学校司書は一人職種ということで、どうしても普段孤立しがちです。自分のやりたいことを好きなように実現できるメリットもありますが、他の学校司書との繋がりができることで、他の司書から新たな刺激を受けられますし、自分がやっていることを多くの人に見てもらうことが自信につながりますからね。」とお話ししてくださいました。
 そのため、スタンプラリーに新しい参加校が増えるたび、杉山様も足を運ぶようにしているとのお話でした。都立学校の中では合同研修などである程度の理解と交流があったものの、国立や私立の学校図書館についてはあまりよく知らないままでした。それが今では、このスタンプラリーを通して、設立に分け隔てなく情報共有ができ、お互いがより良い図書館を作るためのチャンスになっていると伺いました。

■「学校図書館」に対する思い

 「学校では教員が中心となっていて、学校司書はなかなか陽があたりませんが、学校図書館のプロフェッショナルとして自信やプライドを持って仕事をしてほしいなと思っています。」
 どんな質問にも気さくにお答えくださり、かつ門外漢の取材担当者にも分かりやすくお話ししてくださる杉山様。常に温かいお声でありながら、特に学校図書館や学校司書について語る際は熱い想いを感じました。
 文部科学省の新学習指導要領において、現在の児童生徒たちは「探究学習」を行うことが求められています。「探究学習」とは、単に問題の答えを学ぶというだけではなく、生徒自身が「問い」を決め、課題の解決に向けて情報を集めたり、分析したり、意見交換をしたりしながら進めていく主体的な学習活動です。 課題を探し、考えるための材料を集めることや、価値観を豊かにするための読書を進めることなどは、生徒が一人で行うのは難しいです。そこで、学校図書館のプロ、専門職である学校司書の出番となります。学校図書館での調査研究の場面や読書指導で、生徒や教職員を適切にサポートするためには、長い時間をかけて積み重ねてきた信頼とスキルが必要なのだということが、お話の中で伝わってきました。
 また、図書館は保健室に次いで「学校の中の居場所」になる場所です。学習活動の時だけではなく、暇な時、まだ帰りたくない時、教室にいたくない時に、いつでも迎えてくれる図書館の環境作りも学校司書の領分。
 環境作りと言うと、つい個人席のパーテーションやPCなど設備に目が行きがちですが、居場所として最も大切なことは「まずは開いていること」。さらに、常に同じ人がいることも重要なのだそうです。いつでも誰でも自由に中に入れて、見知った顔の人がいることが、生徒にとって安心して利用できる空間となります。
 実際に杉山様の勤務されている東京都立南多摩中等教育学校の図書館では、居心地の良い場所になるように将棋盤やぬいぐるみを置いたり、興味を広く持てるように映画のポスターや漫画なども並べたりしていて、生徒達がそこかしこで思い思いの時間を過ごしていました。

ぬいぐるみや面白そうな展示がすぐ目につく図書館入口 テーマ特集コーナー

ぬいぐるみや面白そうな展示がすぐ目につく図書館入口(写真左)/テーマ特集コーナー(写真右)

奥の書架 学校がお薦めする、学生時代に読んでほしい100冊の本コーナー

奥の書架(写真左)/学校がお薦めする、学生時代に読んでほしい100冊の本コーナー(写真右)

■今後の展望

 東京・学校図書館スタンプラリーの今後についてお伺いしてみると、「やはり、続けるということが大事です」と杉山様。
 『多くの人に学校図書館の魅力を知ってもらいたい、理解を深めてもらいたい』と始めたこの取り組みも9年目となり、年々活動の輪も広がってきました。もっと広げていきたいという気持ちもありつつも、今の規模が趣旨に沿って運営できる最大レベルではないかとも感じているのだそう。「今後は、それぞれの参加メンバーが得意なことや良い点を活かした運営をしていきたいですね」と笑顔で教えてくださいました。
 2021年度も残念ながら夏の学校図書館公開イベントは中止となってしまいましたが、ブックガイド小冊子の作成や作家講演会は継続して行うそうです。小冊子はPDF形式でホームページにて公開されていますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。(東京・学校図書館スタンプラリー

 

■まとめ

 図書館、と言うと多くの人が公共図書館をイメージしますが、子供たちにとって身近なのは通い慣れた自分の学校の図書館です。今回のお話を聞いて、学生の頃にはよく読書や勉強のために利用していたことを思い出しました。その頃に「東京・学校図書館スタンプラリー」の取り組みが始まっていれば、他の学校に行った友達と待ち合わせて、都内の学校図書館を巡ったと思うので、今の子供たちがとても羨ましいですね。
 また、このスタンプラリーはある種、学校司書さんたちの文化祭のようなものだと感じました。学校図書館という空間は、外からでは何が起きているかが見えにくいところです。そのような学校図書館が、このスタンプラリーによって開かれることで、他校の司書や児童生徒、一般の大人たちから見てもらえるようになります。見てもらえるとモチベーションが高まり、準備や計画にも力が入るというもの。杉山様が「学校司書にとってもメリットがある」と仰られたのには、そのような理由もあるのではないかと思いました。
 今回のお話を記事にすることで、学校図書館や、子供たちの学ぶ環境について一人でも多くの人に興味を持っていただくきっかけになれば幸いです。

 杉山様、お忙しい中お時間いただき本当にありがとうございました。

■クレジット
※ 2021年2月19日 (金)
※ 本事例中に記載の肩書きや数値、社名、固有名詞および製品名等は、閲覧時に変更されている可能性があることをご了承ください。

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